防疫生活下でも引越し盛況、台湾人気質は臨機応変さ

台湾生活

台湾で今年2021年5月の中旬から始まった防疫警戒レベル3級は、今日7月2日の時点で3回も延長されています。今のところ7月12日までとなっていますが、いつ終わるか見通しの立たない状態です。外出時はもちろんマスク常時着用、屋内5人、屋外10人以上の集まりは中止という厳しい状況下で、街はロックダウンではないですが実際に閑散としています。この状態で、ひっそりと引っ越す人が増えてきました。若い人は実家に戻り、家族世帯はより家賃の安い部屋に住み替え始めています。営業停止になったレジャー施設は早々に撤退、売り上げの悪いレストランも店じまいです。防疫警戒は厳しいですが、まだ2カ月しか経っていない中、フットワーク良く引越しの決断が早いのが台湾人の特徴です。

目立つ「搬家」トラック

2021年6月以降、台北の街中で、車体に「搬家」と書かれたトラックを頻繁に見かけるようになりました。これは引越し業者のトラックです。彼らは、マンションやオフィスビルから黙々と荷物を運び出します。防疫レベルが3級に上がって1カ月が経ち、商売をたたむ経営者が増えてきました。近くで2~3か月前の春に開業したお店が、もう廃業しました。日本から進出してきたレストランや会社は、撤退も視野には入れているそうですが、まだ状況をみて判断を保留しています。

私の住んでいるマンションでも、この1カ月、引越し業者のトラックが停まっているのが頻繁に見られました。我が家の隣人もいつの間にか出て行きました。挨拶できなかったのが残念です。防疫警戒レベルが3級になったのは5月19日です。その後たった1か月で、繁華街の空き店舗が目立つようになりました。不動産紹介サイトをチェックすると、全体的に家賃が下がっています。台湾人は、どうしてこんなに引越しの決断が早いのでしょうか。

引越しの理由、個人の場合

引越しの理由は、「個人」と「会社」ではやや異なります。今回の防疫警戒レベル3級では、フィットネスジムや映画館、ゲームセンターなどの娯楽施設は休業を強制されています。レストランはテイクアウトのみになりました。オフィスへの通勤は控えるようにと政府から指導され、多くの人がリモートワークに切り替えました。日本人のように何が何でも会社に通勤という体質はありません。娯楽施設やレストランの従業員は、リモートワークができないので無給休暇を取らされます。無給と言っても半額は福祉補償されるのですが、給与半額は大打撃です。それで、住居費を抑えるために引越しという選択になります。業績不振や会社廃業で仕事が無くなり、地方の実家に戻る人もいます。また、大学生の授業は5月に全てリモートになり、6月防疫警戒が延長されると9月末までの長期の夏休みになりました。アルバイト先も少なくなり、多くの学生が宿舎やシェアハウスを引き払ったそうです。もともと台湾人は、お金に関する考え方がシビアで、収入が変わると本当にすぐに引越しします。決断が早くフットワークも良い、これが台湾人の気質です。

いつも満員の台北MRTも閑散としています。文湖線。

*今年は、台湾在住の外国人も引越しが多いです。失業と台湾政府の補助金の対象外という理由で残念ながら自国に帰る外国人が増えています。これを受けて、4月15日に行政院院会で「外国専門人材誘致および雇用法」の改正法案が可決されました。永久居留証の取得条件の緩和や、税金や社会保障面の優遇処置が内容に盛り込まれており、現在の入国制限解除後に、海外の優秀な労働者を雇用する準備がすでに整っています。政府のフットワークの良さは素晴らしいです。先のブログに書いたAIoTアジアシリコンバレー計画など、最先端の技術を持つ外国人の大量募集案件がコロナ終息後すぐに見込まれます。台湾で就職を希望している日本人は期待しましょう。

台湾の最新AIoTが未来都市へ、智慧城市展

引越し理由、会社の場合

「会社」の引越し理由の多くはもちろん売り上げの減少となりますが、もう一つの理由として、日本よりも守られている社員の「リモートワーク」があります。つまり、「出勤する社員が少ない」ということは「広いオフィスは必要ない」という合理的な考えです。台北市の法人向けの賃貸料はとても高額です。1か月以上売り上げが無ければ、経営がすぐ困難に陥ってしまいます。また、家具や設備を残したままで退去できる場合が多く、会社や飲食店は信じられないほど簡単に移転してしまうのです。日本のように飲食店への補助金がないのも撤退の理由です。個人に対する給付金、補助金は色々ありますが、法人への補助金はほとんどありません。
観光業は、昨年から続く防疫警戒レベル2級で既に撤退してしまった状態です。今回の防疫警戒レベル3級では、美容室やネイルサロン、エステサロンが特に打撃を受けました。先月、私がヘアカットした美容室は今年4月に新規開店したばかりの綺麗なお店でしたが、残念ながら閉店が決まったそうで次回予約が出来ませんでした。一方、日系の飲食店が多い林森北路では、バーや居酒屋が弁当販売を始めていました。空いた時間に「Uber Eats」をやってでも店を守ると言っていた日本人マスターもいました。せっかく外国まで来て開業したからということもあるでしょうが、日本人は何としてでも店を守り、台湾人は儲からない店は閉めるという国民性の違いをひしひしと感じました。

コロナ禍以前でも台湾人の飲食店は、売り上げが悪ければすぐに閉店します。撤退した飲食店の後には、しばらくすれば別の店が開店します。飲食店のオーナーは試行錯誤しながら儲かる商売を探しているのです。台湾の内装業者は、本当に安い予算から対応してくれます。これも容易にお店が開店できる理由の1つです。

*企業救済融資のお知らせです。条件が厳しいですがご参考に下さい。
https://www.ndc.gov.tw/nc_27_35085

台湾の引越しはこんなに簡単

台湾でよくある「家具・家電付きの部屋」を借りていれば、引越し業者は必要がありません。大昔の浪漫飛行的な歌ではありませんが、本当にスーツケースと手荷物数個で、いわゆる「タクシー引越し」ができます。ゴミの処分も、日本より比較的に簡単にできます。光熱費や通信費は大家さん名義で契約している場合が多く、解約手続きも大家さんにお任せです。こんなに手軽なら引越しもすぐに決断できますね。

台北市では家賃が高額なため、多くの若者は大人数でシェアハウスに住んでいたり、ファミリータイプの部屋を仲間とシェアしていたりします。先回のブログで書いた通り、台湾での賃貸契約は、不動産業者ではなく大家さんと直接交わします。途中で解約するときの違約金も大家さんとの交渉ですが、若者は特にフットワークが良く、気に入った物件が見つかれば多少の違約金を払ってもすぐに移ります。引き払うのも早ければ、入居者が決まるのが早いのが台湾ならではです。

台北でお部屋探しのコツ、日本と同じやり方じゃ見つからない。

まとめ

台湾で防疫警戒レベル3級の中での引越しについてレポートいたしました。個人では減給が主な理由です。会社でも売上げの減少が直接的な理由ですが、リモートワークに切り替えて事務所が必要ないという合理的な理由もあります。家賃の支払いに不安があれば、直ぐに引越しをしてしまう台湾人は、お金にシビアな東南アジア圏の人々らしいと感じました。現在、不動産紹介サイトには、居ぬきの飲食店物件がお値打ちに紹介されており、コロナ終息後にレストラン経営をやりたくなります。今すぐなら条件の良いきれいな物件がリーズナブルに借りられそうですが、コロナの終息と同時に値上げが予想されます。どのような理由であれ、台湾で引越しをするにはスピードが肝心だということです。台湾人は、お店の物件に対する愛着はあまりありません。「儲け重視」「フットワークは軽く」という台湾人の商売人魂に感心するばかりです。

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