台湾 STAY HOME で、若者たちが「自炊回帰」へ

台湾生活

台湾では、今年2021年5月から防疫警戒レベル3級が始まり、この7月も困難な生活が続いています。街は半ロックダウンの状態で閑散としています。レストランやカフェテリア、コンビニエンスストアも、店内での飲食が禁止されているので、持ち帰りのテイクアウトだけで営業を続ける厳しい状態です。そんな中、台北市内の若者たちの食卓が変わってきました。大都会の台北市では、夫婦共働きがスタンダードで、結婚後に専業主婦となる女性は稀です。時間を節約するために家で夕食の準備はせず、外食かテイクアウトがほとんどです。しかし、この防疫生活で、逆に自宅で料理することが見直され始めています。今回は、台北市の自炊事情についてレポートいたします。



台湾若者たちは自炊する?

台北市のオフィスで働いていると、自宅からお弁当を持参する社員の方をちらほら見かけます。「そのお弁当は誰が作ったの?」と尋ねると「母です」と元気よく返答されました。男性の場合は「妻です」という方もいらっしゃいます。ある程度の年齢の女性でも、普段料理をするか聞いてみると「テイクアウトしています、自宅では作りません」と言っていました。女性だからといって、毎日料理をするわけではなさそうです。若い男性の自炊率は、私の周りだけかもしれませんが、ほぼ「0」です。台北市では普通のことだそうです。

料理を作るのは誰?

台北市で働く若者たちは、料理は「お母さん」が作るものという考えでした。男性も女性も同じように働く台湾です。安く外食できる環境があるということもあり、自炊に拘りはありません。そんな彼らも、家庭を持ち子供が生まれると、「健康に良い食事」を意識する人が多くなります。共働きですが、比較的仕事に融通が利く母親が料理することになるそうです。母親の仕事が忙しい場合は、父親が料理する家庭も結構ありました。だんだんとその比率は増えているそうです。

台湾料理の代表「魯肉飯(ルーローハン)」

台湾の外食産業がこんなに活発になったのは、ここ20年くらいのことだそうです。2002年に台湾の男女雇用平等法が発布され、給与や待遇で男女の差がほとんどなくなりました。働いて収入を得ることが出来るのなら、母親が無理に食事を作る必要はありません。もともと東南アジア圏では、女性が働くことはごく普通のことですし、屋台文化が幸いして、食事のテイクアウトに抵抗が無かったこともその理由の1つです。

防疫警戒レベル3級が自炊生活のきっかけに

この5月から始まった自粛生活で、レストラン内での飲食が禁止になり、自炊への意識が出始めました。また、無給休暇で給与が減り、自炊を始めた方々もいらっしゃるでしょう。ですが、台北市での自炊生活には大きな問題があります。若者たちが借りている比較的に家賃の安いアパートの多くには、キッチンが設置されていないのです。ホテルのような部屋を想像していただければ分かりやすいと思います。キッチン付きのアパ―トで共同生活している場合も、キッチンを占領することを避けたり、ルームメイトとの衛生概念の違いで自炊を断念したり人も多いと聞いています。

Lunch box

台湾の持ち帰り弁当。おいしいけど、野菜は少な目

しかし、現在スーパーマーケットでは、実際に生鮮食料品や一部の調味料が売り切れていたりしています。やはり自炊に挑戦する人は確実に増えています。ウーバーイーツやフードパンダといったデリバリーサービスは、地域によって配達できる料理の種類に限りがあります。毎日同じような料理ばかりでは飽きてしまいます。台北市内で働く人は、自宅待機やリモートワークで時間に余裕ができました。台北市内での買い物は制限があるものの流通は滞っていません。新鮮な野菜や果物、肉や魚も安価で入手できるので、今こそ料理に挑戦したくなるのでしょう。

料理は誰から習うの?

台湾の小学校でも簡単な料理を教えているらしいのですが、先述の通り、若者はあまり料理を作りません。母親から習うのかと思ったら、台北市では母親も働いているので、家族の誰も料理しないという家庭の話も聞きました。台湾でも地方都市ではまた話が違います。3世代が一緒に住んでいる家庭でしたら、母親以外に祖母や叔母と一緒に料理するということもあると思います。端午節の粽子(ちまき)を、親戚一同が集まって作ることは有名です。最近では、日本の料理教室「ABC Cooking Studio 」が進出しています。この時期はしばらく休止ですが、普段は意識高い系の女性たちで賑わっています。

友人、知人の自炊状況

私の知人の台湾人ベテラン主婦は、餃子を皮から作ります。彼女が作った炒め物や煮物は、小吃店に負けない味です。台湾料理と言えば、福建料理をベースに台湾独自で発展した料理です。定番の家庭料理には、三杯鶏、炒空心菜、炒米粉などがあります。「三杯鶏(サンベイジー)」は、酒・醤油・ゴマ油の三種類の調味料で味付ける比較的に簡単な料理です。お弁当のおかずに入っているのをよく見かけます。青菜を鶏ガラスープで味をつけた「炒空心菜(青菜炒め)」も鉄板の家庭料理です。「炒米粉(ビーフン炒め)」は、有り合わせの野菜と豚肉にビーフンを合わせた炒め煮です。味の決め手は干しエビです。

最近では日本式のカレーも人気です。よく売れているカレー粉は、何と「バーモンドカレーの甘口」でした。甘口好きが台湾らしい。若い奥様方は日本食に大変興味があるので、オムライスや日式の味噌汁も食卓に並ぶそうです。キッチンがない家に住んでいる人は、電気コンロを持ち込んで、袋ラーメンを作っていると聞きました。これでも立派な料理と言っています。でも、どこの国でも同じ、最初はそういうところからですよね。

Pot rack

台湾のポットラックパーティー 手作り餃子がおいしそう。

まとめ

台北市の若者たちが始めた自炊生活を紹介いたしました。やはり慣れない人には厳しい状況です。キッチン付きのアパートは家賃が高額なので、外食の費用を気にしない人が住んでいます。節約のために自炊という考えはありません。よく台湾の食事は、日本人の口に合っておいしいと言われますが、油が少し多めなので、冷めた料理を温めなおすと味が半減します。持ち帰りの料理では、いつもの美味しさが味わえません。この今の自粛生活の時期だからこそ、自炊が見直されています。

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